安眠
にゃー、依玖ー
俺もふかふかのベッドで寝たいにゃー。
依玖に寝床が出来た。
なかなか立派なベッドで寝心地はよさそうだ。
最初のうちはベッドを買うのを嫌がってたくせに、
案外気まぐれなやつだ。
まあ、自分で働いた金だからいいってことなのかもしんにゃいけど、
とにかく寝床を手に入れて、依玖はちょっと柔らかい顔になった。
オレ様にとっても、
温かい寝床と餌に困らない今の生活は楽ちんだから、
依玖がここに根を張るのは悪いことじゃない。
これで、餌がもっと豪勢なら言うことないのににゃー
(なんかちょっとどきどきすんな)
自分にちょっと苦笑して、猫川は真新しいベッドに潜る。
とても清潔で安心する匂い。
馴染みがなく戸惑うが、決して不快ではない。
疲れた体をふわりと包む布団は優しくて、
変に感動する。
(ベッドぐらいで大袈裟だな)
そう思って、猫川は再び自嘲した。
依玖のやつ、
オレ様を呼ばないで勝手にひとりで寝やがってー。
…まあ、いいにゃ。
こっちのベッドで寝てやるからにゃ。
猫川とみや夫がやってきてから、
もっとも穏やかな夜。
それぞれが、
安心して眠る夜。
まだちょっと不安もあるが、
確実に距離を縮め、
少しずつ家族になっていく元他人たち。
これからはただただ平穏に――
とはいかないかもしれない、やっぱり……
つづく…