猫川くん登場
「おりゃおりゃ、肉球肉球〜」
人の家にやってきてそうそう、仔犬の肉球に夢中な彼の名は猫川依玖。
何の因果か、愛猫と共に犬山家に放り込まれた少々性格に難のある青年だ。
「にしても、先生とやらは見当たらないが、このまんまひとり気楽にできりゃいいのになー」
こちらは猫川くんの愛猫、みや夫
(依玖のヤツ、好き勝手いってるけど世の中そんなに甘くないにゃよ。にしても犬だらけなのが気に入らにゃいにゃ。まー、でも水槽にうまそうなのがいっぱい泳いでたにゃ。にひひ)
可愛がっているお魚さんたちに忍び寄る魔の手があることも、それ以前に侵入者がいることも気づかずに、犬山先生はのんきに寝ていた。
そんな間にも……
「にゃかにゃかうまいじゃにゃいか、にゃぐにゃぐ」
「あ、あの、それはぼくたちのごは……」
「にゃんだよ、皿が猫の形してんだから猫のに決まってるじゃにゃいか」
くぃーん……
「しかたないわよ、ジロ…」
どうやらワンコとニャンコは挨拶を済ませた模様。
なかなか先生は起きてきそうにない。
でもそれも、しかたがないことなのだ。
なんといっても、彼の1日は無職…もとい、自由業のくせにとても忙しいのだ。
そんなことをしている間に、タロウが仕事から帰ってきた。
(ふぅー、疲れたー。でもいい汗かいたワン)
「ふわぁ〜は…よく寝たな…」
車の音が聞こえたのか、
犬山が目を覚ました。
階下の異変に気づくのはこの数分後のことである。
つづく……