10.名前


「おい、天使」

呼ぶと、天使の奴はきもちわりぃ『優しい笑顔』ってやつでこっちを見た。

「…なんですか? ヘイゼル、ですよ。カロンさん」

うるせぇ。名前なんてどーでもいいだろ。それより…

「お前仕事ってどういう事だよ」
「…あぁ、仕事? どういう事って何ですか?」
「何ってお前、奴隷になるんだろうが」

・・・とぼけるつもりか? 忘れたとは言わせねーぜ。

「えぇ、ちゃんと名前で呼んで下さるならなりますよ。愛の奴隷に」
「・・・またそれかよ。あのな、愛とかどーでもいいからお前、俺の奴隷になるんだったら仕事とかいって逃げんじゃねーよ」
「・・・カロンさん。ヘイゼル、です。呼んで下さるならば、なりますよ」
「・・・・・・・・・・」

そうだ。名前を呼ぶだけで奴隷になるなんざ簡単な話だ。バカな奴め。
「・ ・ ・ ・ ・ 」
呼ぶ、だけだ・・・
「ヘイゼルさん、お食事どうぞ」
「あぁ、ありがとうございます」

「カロンさん? 呼ばないんですか?」
「う、うるせえ」

ピンポーン

「こんな時間にお客様でしょうか?」
「いい、綺羅。俺が見てくる」

別にいますぐ呼んでやる必要もねぇ。クソ




「ここか?」

「そのようですわね」
「へぇ。ここに天使の奴が押しかけてきてるってことか」
「・・・サイレス。くれぐれもカロンとラプンツェルに迷惑をかけるんじゃありませんよ。もともとはあなたはここに来させる気は無かったんですからね」

「あーぁーもー、わかってるよ。アニキに迷惑かけなきゃいいわけだろー」

カロンの弟。サイレス登場でつづく。