12.内緒

翌日。


「ねぇヒロ。朋聡くんホントに引っ越しちゃったの?」

関係ないですが、直帆さんは仕事中しょっちゅうレジの後ろのイスに座りたがります。
そしてレジっ子ヒロをみつめます・・・。そんなに好きか・・・

「ん。まーでもきっとすぐ帰ってくるよ…って、コレ一ノ瀬さんには内緒ね。
あ、いらっしゃいませー」


「どうして薫には内緒なの? きっと薫だって心配してるよ?」

「まぁー…。とにかく内緒! ね! ほら直帆、お客さん」

「もう…」

その頃、ビジネスキャリアの薫さん。オフィスにて・・・(※イメージ画像)


「橘・・・。何故黙って出て行ったんだ・・・」

いえいえ、あなたが直帆さんと語ってて気づかなかったんでしょうよ・・・・
仕事も手がつかない状態です。

「まさか悲観して自殺なんて…いや、あいつに限ってそれはないだろう。
バカな事を考えるな」


いつも冷静な薫さんが直帆さん以外の事でこんなに心配して、
落ち着いていられないなんて極めてめずらしい事です。
やっぱりハートでちゃってるんだねー

「いかん。もうこんな時間か…帰ろう…」





「全然平気そうだったじゃん。一ノ瀬さん。ね、別に言う事ないよ」

「うん−・・・」
(ヒロにはそう見えるかもしれないけれど…薫、どう見たって元気がない…)


きっと薫さんは誰がみても平気な顔をしているんでしょうが、直帆さんにはわかるのです。


(ヒロがああ言ったってことは、きっと本当にすぐ帰って来るんだと思うけれど…
 あんな薫の顔、見たことない…。そんな様子をみて、黙っておくなんてできないよ…。
 …内緒、か…)


つづく