12.サイレス
早速、アニキに教えてもらった天使の部屋にに嫌がらせをしに行った。
ガチャ
マリア像やら何やら薄ら寒い空気の漂う部屋だったがまぁ、ガマンだ。
「・・・・あの」
読書をしていた天使は立ち上がろうともせず無防備な顔で俺を見つめる。
きょとんとしやがって。遊びにきた近所の子どもだとおもったら大間違いだぞ、おい
「・・・・」
「すみません、今聖書を読んでいるところですので、
何かご用事でしたらあとにして頂けませんか?」
何か、特別な時間なのだろう。かなり言いにくそうにではあるが
きっちり断ってきた。
「・・・・」
構わずにおれは人形を前へ突き出してやる。
これじゃー、その聖書とやらも読めないだろう。
「・・・・あの」
読むことも出来ず、拒むことも出来ず、困っているようだ。
そうだそうだ、もっと困れ。
無言で人形を突き出され続けて、天使はますます困惑していた。
そこに、心配だったのかアニキが部屋に入ってきた。
「おい、サイレス…」
「あぁ、カロンさん」
助けを求めるようにアニキを呼ぶ。残念だったな。アニキが助けるわけあるかよ。
「どーよ?」
「おまえ…」
やるじゃないか。そう、目が語っていた。
「カロンさん、お知り合いですか?」
「アニキ」
天使の奴の声を遮ってアニキの傍へ行く。
「ア、アニ…え…、え?」
驚いている天使を無視して、アニキの耳に口を寄せ小声で話す。
コソコソ…
『天使の奴の弱点みつけたぜ』
『え…マジかよ、サイレス…』
『ごにょごにょごにょ…だから、ゴニョゴニョ…してやろうぜ』
『おまえそれ…! 本当にする気か? わ、ワルだなお前ー!』
アニキのほうがよっぽどワルのくせに、俺を喜ばせようとしてわざとオーバーな反応をとっているようだ。
相変わらず、アニキは俺を大事にしてくれていると感じた。
ま、でもアニキが知ってる頃の俺より格段にワルになってる自信はあるけどな!
つづく